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食べ(られる)もの

ひょんなことから始まったペスクタリアンの生活も、気がつけば1ヶ月が過ぎた。
外で食べる回数は以前より減って、自宅で奇妙な料理を作ったりすることが増えた。
奇妙というのは、レシピとかを見ないで適当に炒めてみたりしているからなのだけど、リンゴをかじりながら料理をしていて不思議に思ったことがある。
このリンゴはそのままでもとてもおいしいのに、なぜぼくはトマトを炒めたり塩をふったりしているのだろう。

そもそも、自分は生まれてから今まで、その辺に生えているものを食べてみたりしたことがない。
だから、食べられるものや食べられないものを選り分けたこともない。
いま突然、大自然に放り出されたら生きていけるだろうか。もしそうなったらどうすればいいのだろう?
いやまてよ、おいしいってそういうこと?
人間は、食べものを栄養にして生きのびてきたわけだから、自然が罠でも仕掛けないかぎり味覚が判断してくれると考えていいのではないだろうか…(何を当たり前のことを、と思いながらも、オートマチック車しか運転したことがない人がマニュアル車を運転しようとしている気分だ)。
すると、テレビのレポーターが、畑から採れたてのキュウリをまるかじりして、何も味付けしていないのにおいしい、と言っているのは変だ。
最初にキュウリを食べた人間は、それがおいしかったから食べられると思ったわけで、塩揉みをするのに適していると思ったわけではないはずだ。

ただ、良薬は口に苦しというし、腐りかけが一番おいしいとか聞いたこともあるし、ぼくみたいな素人がちょっと考えるようなものではなくてもっと複雑な仕組みが自然にはあるのだと思う。
けれど、例えば塩揉みされた発泡ウレタンや、ガソリン揉みされたキュウリみたいなものがこっそり出されても、ちゃんとそれを「これは人間の食べるものではない」と思えるかどうか自信がない。

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