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- Date
- 2008-09-14 (日)
- Category
- 日記
「そいつは初耳だ。どうして建設しなくちゃならないんだ?」
ミスター・プロッサーは指を一本立てて振ってみせたが、すぐにまた引っ込めた。
「どうして建設しなくちゃならないって、それはどういうことです?バイパスですよバイパスは建設しなくちゃならんものなんです」
バイパスとは、ある人をA地点からB地点へ大急ぎで移動できるようにし、またある人をB地点からA地点へ大急ぎで移動できるようにするための手段である。その二地点のちょうど中間のC地点に住んでいる人々は、A地点にどんな取り柄があれば、B地点の連中はあんなに急いでそこへ行きたがるのかと思い、またB地点にどんな取り柄があれば、A地点の連中はあんなに急いでそこへ行きたがるのかと思う。そしてしょっちゅう思うのは、いい加減自分がどっちにいたいのか早く決めろよということだった。
ミスター・プロッサーはD地点にいたかった。D地点は具体的にどこということはなく、ただA地点からもB地点からもC地点からも遠く離れた任意の一点だ。そのD地点にこぢんまりしたコテージを建てたい。入口の上には斧を飾って、E地点に腰をすえて快適な時を過ごすのだ。ちなみにE地点とはD地点の最寄りのパブのことである。妻はもちろん蔓バラを這わせたがるだろうが、彼は斧を飾りたかった。なぜかわからないが、昔から斧が好きなのだ。ブルドーザーの運転手たちが馬鹿にしてにやにや笑っているのを見て、顔がかっと熱くなってきた。
“宇宙ヒッチハイク・ガイド”
D・アダムス著
安原和見訳
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- 41:2009-09-19 (土) 05:56
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